
エプソンのプリンターEW-052Aは、手頃なベストセラー商品である。印刷品質もそこそこ良くて使いやすい。欠点は、インクの消耗が速い(カートリッジのインク容量が少ない)、純正インクの価格が高いことである。多くの人が互換インクや詰替えカートリッジを使っていると思われる。
初期のセットアップインクを使い切ったので、アマゾンで詰替えカートリッジを購入した。インクの詰替えは簡単でICチップも自動復帰なのでリセッターを使う手間もいらない。プリンターもカートリッジを認識して使えるようになった。

しかし、問題が発生した。順調だった印刷の文字がかすれる。画像に筋が入る。ヘッドの目詰まりだと思ってクリーニングをしたり、ノズルチェックパターンを印刷して使っていた。販売元のサイトを見ると「数回クリーニングをして、印刷品位を『きれい』にして印刷してください」とあった。印刷する度にヘッドクリーニングをしたり印刷品位を『きれい』にするのはストレスがかかるし、手間だ。
純正のマグカップインクに替えてみると問題なくきれいに印刷できる。どうやらヘッドの目詰まりではなく、インクカートリッジからインクが充分供給されてないのが原因だと推測した。
互換インクにするとヘッドの目詰まりが発生しやすいと言われるが、インクに問題があるのではなく、インクの供給が足りなくて、ヘッドからの吐出量が不足するのが原因と思われる。純正カートリッジやリサイクルカートリッジは、その点問題ない。
キャノンの純正インクカートリッジを詰替え式にする製品は数多く販売されているが、エプソンのマグカップインクカートリッジを詰替え式にする製品は、ほとんど販売されていない。理由は、エプソンのインクカートリッジの構造が複雑で、改造やインク充填が難しいからかもしれない。エプソンの純正インクカートリッジを改造して詰替え式にできれば、純正の安心感と詰替え式のコスパを兼ね備えたものができるのではないか。純正インクカートリッジを分解して構造を調べ、詰替え式の改造にチャレンジした。
純正マグカップインクカートリッジの構造
(カートリッジのラベル面を表とする)空気の経路とインクの経路が複雑な迷路状態になっている。

ラベル面を表とする。

カバーの面を裏面とする。

ラベルをはいだ状態。
透明なフィルムでおおわれている。空気の流れる細い溝が見える。

カバーを外した状態。
黒いフィルムでおおわれている。
フィルムの中は、数ブロックの部屋に分かれている。
ダイヤフラムとチェックバルブを分解した。 フィルムを除けると、空気室とインクタンクがある。


カートリッジの構造をよく見ると、メーカーが最初にインクを充填した穴は加熱加工によりふさがれており、その近くにインク残量感知プリズムがあるので、ここに穴をあけることは難しい。しかし、インク吐出口の近くにインクを詰替える穴を開けるスペースがある。穴をふさぐゴム栓のベロを収める部分もカットできそうだ。


空気の流れを黄色の線、インクの流れを水色の線でたどった。空気孔からカートリッジ内部に入ったり、表のラベル面の細い通路に出たりを繰り返して、空気室を3つ通ってインクタンクにつながっている。インクタンクは約6ccのインクが充填できる。細い通路を通ってバネとゴム膜のダイヤフラムにたどり着く。このダイヤフラムは、プリントヘッドの素早い左右の動きによって振られてポンプの役目をすると思われる。ダイヤフラムからチェックバルブ(カートリッジがセットされてない時にインク漏れを防ぐ)を通ってプリントヘッドにインクを吐き出している。
カートリッジを詰替え式に改造する。もっと簡単な改造方法は、こちらです。
※改造は自己責任で行ってください

カートリッジにマイナスドライバーを差し込み左右の爪を外す。

カバーの内側にあるフィルムを傷つけないように注意して作業をする。

カバーを持ち上げると、カバーが外れる。

カバーの図の位置にピンバイスで小さな穴を開ける。

カバーにゴム栓用の穴(5.5mm)を開ける。

カバーの図の位置に5.5mmの穴を開ける。

ゴム栓のベロを収納する穴をカッターで切り取る。

ゴム栓のベロの形状に切り取る。



インク注入口の穴を開ける。
元から開いている小さい穴にドリル(4.0mm)で開ける。切カスがカートリッジ内部に入らないように注意する。
カートリッジにカバーをかぶせて、ゴム栓をする。
ゴム栓のはみだした部分をカットすれば完成。
もっと簡単な改造方法があります。クリックしてください→ インクカートリッジの改造(その2)
インク充填



ゴム栓を外して、シリンジと注射針かマイクロノズルでインクを4cc注入する。黒は、顔料インク。カラーは、染料インクを充填すること。
注入が終わったら、ゴム栓でふたをする。
カートリッジが黒くて中が見えないので、キッチンスケールで重さを計って、純正品21gとの重量差を注入するとよい。
詰替えのタイミングは、インク残量が少なくなってLEDが点滅した時点でインクを補充すればよい。
万が一インクが無くなっても、純正カートリッジは、インク残量検知プリズムでカートリッジが空であることを検知して、LEDが点灯して印字を止めてくれる。プリンタヘッドが空打ちすることはない。互換カートリッジはこの機能が無いため、多めにインクを充填している。
ICチップのリセット
使用済みのカートリッジを使うためにはICチップをリセットしないと使えない。方法は二つある。
1.アマゾンで販売している「ICチップリセッターMUG(マグカップ)対応」を購入してICチップをリセットする。
2.詰替用カートリッジを購入して、自動復帰ICチップを純正カートリッジに張り替える。


私は、自動復帰ICチップを純正カートリッジに貼りかえる方をお勧めします。理由は、リセットする手間がいらない。詰替用カートリッジについているゴム栓が使える。補充インクがセットで購入できるからです。
印刷結果

写真は、アマゾンで購入した詰替え式カートリッジで印刷したもの。全体的に筋が入って、印字不良状態。

純正カートリッジを詰替え式に改造したカートリッジで印刷したもの。
印刷品質は、雲泥の差があります。純正カートリッジを改造したものは、かすれや筋はまったくありません。
インクは、詰替え式カートリッジに付いていたものを充填しています。
使用するインクカートリッジによるメリット、デメリット、コスト
純正インクは、品質は高いが、高価。 4色セットで約4,000円
リサイクルインクは、品質は良いが、値段がそこそこ高い。 4色セットで約2,500円
互換インクは、価格が安いが、品質はそれなり。 4色セットで約1,000円
詰替カートリッジは、コストは安いが、印刷品質に問題があった。 4色充填1回あたり約500円
純正カートリッジ改造の詰替えカートリッジは、印刷品質問題なし。 4色充填1回あたり約500円。ベストな選択肢だと思います。改造する手間と技術があれば最強でしょう。
過去にエプソンの純正カートリッジを詰替え式にする製品がいくつか販売されたが、インクの注入方法が空気を吸引する等複雑なものが多かった。今回の改造は、単純にインクを注入するだけで実用的と思われる。
※メダマヤキインク、リコーダーインク、IC69、IC76等エプソンの多くの黒い四角のインクカートリッジがこれと同じ方法で改造できます。
※なお、インクカートリッジを改造する場合、当方はいかなる責任も負いません。ご自身の責任で行ってください。
おまけ IC50インクカートリッジの改造
現在EP-802Aで詰替えカートリッジを使用しているが、インクカートリッジがプリントヘッドと離れている(オフキャリッジ)ので、インクを加圧して供給していると思われる。印字にかすれや画像に筋が入ることはない。問題なく使用できる。
試しにIC50純正インクカートリッジを詰替え用に改造してみた。
IC50カートリッジの分解と構造

ラベル面を表とする。

カバー面を裏面とする。

ラベルをはいだ状態

カバーを取った状態
IC50のカバーは、上部に5か所の爪があり、簡単に外すことができない。
力を入れて外すと、爪が折れてしまう。
ダイヤフラムとチェックバルブを分解する。 フィルムを取ると、空気室とインクタンクがある。


空気の流れを黄色の線、インクの流れを水色の線でたどった。空気孔からカートリッジ内部に入ったり、表のラベル面の細い通路に出たりを繰り返して、空気室を3つ通ってインクタンクにつながっている。インクタンクは約8ccのインクが充填できる。細い通路を通ってバネとゴム膜のダイヤフラムにたどり着く。このダイヤフラムは、プリントヘッドの素早い左右の動きによって振られてポンプの役目をすると思われる。ダイヤフラムからチェックバルブ(カートリッジがセットされてない時にインク漏れを防ぐ)を通ってプリントヘッドにインクを吐き出している。


IC50カートリッジを詰替え式に改造する。

インク注入口の位置に印をつける。

ピンバイスで2.0mmくらいの小さい穴を開ける。

カバーの爪を外して、持ち上げる。
(カバーを外すのは困難)
フィルムを傷つけないように
金属(差し金等)で保護して
5.5mmのドリルで穴を
開ける。

ゴム栓のベロ用の穴をカットする。

インク注入口の穴4.0mmのドリルで開ける。

ドリルの切カスがカートリッジの内部に入らないように注意する。

ゴム栓をして、はみ出した部分を切り取る。

IC50インクカートリッジは、構造上インク充填するときシリンジの注射針を斜めに差し込むと内側のフィルムを傷つけて、インクが漏れる恐れがあります。
写真のように針の先にビニールチューブを差し込んでインクを充填するとフィルムを傷つける恐れがありません。
なお、注射針の代わりにマイクロノズルを使うと便利です。
インク充填
ゴム栓を外して、シリンジと注射針(注射針の先端にビニールチューブを差し込む)かマイクロノズルでインクを6cc注入する。
注入が終わったら、ゴム栓でふたをする。
カートリッジが透明でないので中の様子が見えない。キッチンスケールで重さを計って、純正品25gとの重量差を注入するとよい。
ICチップのリセット
使用済みのカートリッジを使うためにはICチップをリセットしないといけない。以前エレコムやサンワサプライから販売されていた詰替えセットのICチップリセッターが使える。詰替えカートリッジは、現在販売されていないので、ヤフオクやメルカリで入手できれば自動復帰ICチップを純正カートリッジに張り替えることができる。
IC55、IC65等白いインクカートリッジの多くがこれと同じ改造ができる。
※インクカートリッジの改造に関して、当方は一切の責任を負いません。ご自身の責任で行ってください。
